アタナシアス・パポリス

アタナシアス・パポリス(著) 平岡寛二(訳)
[1]「工学のための応用確率論〈確率過程編〉」東海大学出版会、1972
[2]「工学のための応用確率論〈基礎編〉」東海大学出版会、1970
[3]「工学のための応用フーリエ積分」オーム社、1967

これらは私が将来の見込みも持たず、何者になるかも分からずに研究生をしていた1970年代前半に出会った3冊である。今日これらをAmazonで検索すると、書名は出ているが値段がついていない、つまり購入不能となっている。もちろん出版社では絶版である。私は〈確率過程編〉はほとんど読んでいないはずであるが、この3冊は今でも本棚の上段に大事そうにおいてある。これらのパポリス本をいつの日かきちんと読もうと思う気持ちがあって、長い年月私の書棚にあるのである。「工学のための応用フーリエ積分」は、研究室でのゼミ(読書会)で使ったような気がするが、この本の思い出は「たたみ込み積分」である。当時は意味がさっぱり分からなかった。信号の時間領域と周波数領域での表現の関係やインパルス応答の扱いなどをきちんと理解できなかったからである。それが50年後の昨年、応用数学を勉強していたときにフーリエ・ラプラス変換(荒木・齋藤2016, pp.116-119)のところで、この数式の意味がようやくわかったような気がする。これらのパポリス本、老人の暇つぶしにゆっくり読んでみるつもりである。

$$ {\int_{-\infty}^{t} h(t-\tau)x(\tau) d\tau} $$

これは時刻 \(t\) までのたたみ込み積分の式である。これは今の時刻 (\(t\)) より昔の時刻 (\(\tau\)) に入力されたパルスの大きさが \(x\)(\(\tau\))、これまでの系のインパルス応答が \(h(t-\tau)\) だから、これらをかけたものを t まで足していく。インパルス応答 \(h(t-\tau)\)は伝達関数であった。この積分計算をフーリエやラプラスの世界に持っていくと、 \(H(\omega)X(\omega)\)や\(H(s)X(s)\)という簡単な計算になるのであった。

ラプラス変換は、フーリエ変換と同様に、たたみ込み積分を積という簡単な形に変換する性質を受け継ぎつつ、指数関数のような値の発散する関数も振動する関数も変換可能…。ただし、変換後に波としての性質はあらわにならないのがフーリエ変換との違い…。[荒木・齋藤2016, p.120]

東海大学出版会の2冊本であるが、Amazonに2018年、これらの原著の改訂版 Probability, Random Variables and Stochastic Processes, McGraw-Hill, 1984 に対して次のようなコメントが出ている。

「アメリカのポリテクニック大学教授Papoulis博士による著書。著者は信号処理分野の大家でもありますが、この書籍も非常に知られていて、アメリカの多くの大学、大学院で教科書として使用されています。私自身も、1999年カリフォルニア州立大学大学院で“Random Process”という授業を履修していたとき、教科書として使用していました。Part I. Probability and Random Variables、Part II. Stochastic Processes.」(AmazonJapanサイト、2018年10月29日に日本でレビュー済み)

[資料]
荒木修・斎藤智彦:本質から理解する数学的手法, 裳華房, 2016

2023/07

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