・シュトルム著, 三浦晃訳:「湖畔(インメンゼー)」(独和対訳叢書)郁文堂, 2000
・シュトルム著, 高橋義孝訳:「三色菫・溺死」(新潮文庫), 1957
を読んだ。前者は、新規購入、後者は古い蔵書の中にあったもの。この人は弁護士や判事を職業としており、かつ出身地Schleswig-Holsteinの領地紛争に関わったりで、多忙な社会生活だったと思う。三作品をあらためて読んで驚かされるのは30代前半のものと60歳近くでのものがほぼ同じ傾向を持って、人生の侘び寂びや避けられない運命と悲劇を描いていることである。年齢を重ねてから読むと、この150年以上前の異国の作家の作品はなんとも味わい深いという言葉では表現が足りないような気がする。さらにこの人は詩もたくさん作っていて、ドイツでは今も詩集が出ているようだ[Theodor Storm: Gedichte, Insel Verlag, 2013]。私はインターネット上で次のような詩を発見した。
Nun schließ auch du die Augen zu,
Geh Phantasie und Herz zur Ruh!
Ein Licht lischt nach dem andern aus –
Hier stand vordem ein Schauspielhaus.
この詩の題名は In schwerer Krankheit(重い病の中で)である。1行目で語りかけられているこの人はまもなく臨終であろうか。そして妄想よ、去れ。心よ、安らかに。下半分は作者自身の述懐であろう。これに触発されて作ってみたのが、下記の短歌である。
人の世の命はひとつまたひとつ日々の流れに紛れ消えゆく
[注1]その後分かったことだが、シュトルム詩集(和訳)は藤原定が2冊著している。(1) シュトルム詩集, 角川文庫, 1968. (2) シュトルム詩集, 白鳳社, 1975, 1999. (2)には、「鑑賞ノート」が付録で付いていて、上の詩は題名が「重病の時」、コメントが「死の一、二年前の作品で、病気中に書いたものだが、ユーモアと達観めいたものが感じられる」となっている。ということは、この詩は自分への追悼メッセージなのか。
2021/08